Baltic Hermétique Glacier

Baltic

BalticのHermétique Glacierを買った。

昨年出たBalticの新ライン「Hermétique tourer」の限定版。レギュラー品と異なり、文字盤中央部が槌目模様になっていて、白と黒の文字盤バリエーションで展開されたもの。

発表時、インスタの公式投稿を見てうっとりした。Glacierの名前の通り氷河をモチーフにした広告だった。Hermétique Tourer自体いつか欲しいと思っていたので、せっかくなら、と考えるも、こういうマイクロブランドの限定版はなかなか手に入りづらい。

  • 製造本数が少ない。大手ブランドのように1,000本2,000本と大量には作らない。
  • 比較的安価な商品が多いためライバルも多い。
  • コロナ以降のネット直販体制ゆえに発売日・発売時刻に「カートに入れる」連打が必要。

他のマイクロブランドではこのパターンで何回か買っているのでやろうと思えばできないこともなかった。ただ、今回は文字盤の槌目模様の質感が肝。現物を見ずにポチるのはなかなか勇気がいる。

そんな流れで取りあえず諦めていた。

そこに、日本のBaltic総代理店であるH.M.S.Watch Storeが現物を見て買える機会を設けてくれるとの情報が…。同店でちょうど他の時計をオーダーしたばかりだったので流石に悩んだ。でも、こういうのは巡り合わせ。大手ブランドなら中古市場が確立しているので最悪中古で買えるけど、マイクロブランドの場合一度逃すと次はない。個人売買を探すしかない。

欲しければ行くしかない。

ということで買った。2ヶ月でBalticを3本買うというアレな行為をしてしまった。

ケース・ムーブメント

直径37mm、厚さ11mm(サファイア風防込み)、縦の長さは46mm。

ケース自体はレギュラー品と同じものだと思うので、より詳しい情報は公式サイトで見て欲しい。

自分が試着した第一印象は「薄!」。
実は前にレギュラーラインのブラウンを試したことがある。でもその時は「思ったより大きくて厚いな」が感想だった。多分文字盤色の印象から来る感覚の違い。人間の感覚なんて本当に当てにならないものだとつくづく思う。
でも、その感覚の世界で我々は生きているのだから、いくら「ケース・風防は同じだよ」と言われても自分にはそう「感じられる」。

ケース形状は至って普通。ただしリューズが完全にケース内にめり込んでいるので、限りなく左右対称に近くなっている。そのせいか、完全な丸形の時計にしては縦にシュッと伸びているように感じられる。

ムーブメントはMIYOTAのプレミアムライン。あえて見せる必要がないから潔くクローズドバック。裏蓋にはシリアルが刻印されている。

文字盤

この時計の最大の売りである文字盤の槌目模様。
白と黒があって、自分は白の現物を見ていないので黒についてのみの話しになるけど、とにかく「鉱物っぽさ」がある。あー、なんというか、黒曜石?

博物館に行くと先史時代コーナーに「黒曜石のナイフ」が展示してある。あれ。
槌目の不規則さも相まってまさに黒曜石。正直「氷」感はない。

槌目の中には無数の細い筋が刻まれている。この辺りも原始人が頑張って削った跡みたいに見えて良い。ロマンがある。

12・3・6・9の数字とその他のアワーマーカーはアプライド。立体成型された蛍光塗料の塊。
このあたりはレギュラーラインと一緒。ただ、レギュラーを試着したときには結構緑がかって見えたのが、このGlacierはどんな光の下でも真っ白に見える。目の錯覚か?

数年前にモーザーが鳴り物入りで導入した立体蛍光塗料が、今やこの価格帯まで下りてくるほどコストダウンが進んだことを思うと感慨深い。それをいえば、この槌目模様のインスピレーション元(おそらく)であるAPのミレネリーの文字盤仕上げがここまで安く大量生産されるようになったのも同様。コロナ禍直前にブティックで見かけて「綺麗だなぁ」と感動していたのを思い出す。

槌目模様以外の特徴としては、この黒はレギュラー品やGlacier白と異なりツートーンになっていない。レギュラーやGlacier白は分目盛りのところは全て黒で、中だけが様々な色に塗られている。これは全面ブラック。どうでもいいように見えて、その実、時計全体のイメージに大きな影響を与えているポイントかもしれない。

Glacierは限定故か箱がちょっと違う。といっても表面のプリントと色だけ。Glacierは氷河をイメージしたプリントになっている。

内箱も素材はどちらも同じコルク。Glacierは文字盤色に合わせたのか色が黒。これ、文字盤白版は箱も白なんだろうか。

ストラップ

Hermétiqueシリーズは全てトロピック(風)ラバーストラップが純正ストラップとして付いている。それに加えて今回はファブリック(風)ストラップも付いてきた。

Balticのトロピック(風)ストラップは総じて柔らかいので、ラバーにありがちな手首側面を圧迫する感じはあまりない。12時側70mm、6時側120mm。社外品に多い80-120とか80-130とかではない、細腕に優しい長さ。

ただ、これはトロピック風全てに言えることだけど、とにかく穴のピッチが広すぎる。

ピッチ驚異の10mm。10mm! メタルブレスで言えば1コマ分。半コマではなく全コマで1コマ分。つまり、腕周りによっては一つ手前の穴を使うとキツすぎ、一つ奥にすると緩すぎ、が発生する。というか、自分は思いきり発生している。

一方でファブリック風ストラップはピッチ6mmと、普通のレザーストラップ同様の間隔を保持している。質感も悪くない。
長さは12時側70mm、6時側115mm。この長さは素晴らしい!!

さらに、裏ラバーかつ文字盤に合わせて不規則な模様で空洞部を作ってある。オマケにするにはもったいない手の込みよう。

ファブリックベルトというよりもラバーベルトの表面にナイロン素材を貼り付けた感じ。分かりやすく言えばゼニスやウブロのストラップに近い。ということは、同じように表面をクロコとかにすることもできそう。型押しでいいので是非バリエーションを増やして欲しい。

どちらもアピエ(クイックリリース)付き。これはBalticの他のモデルと同様。

メタルブレス

70-115mmで6mmピッチ、裏ラバーと、非の打ち所の無いストラップが付いているけれど、自分は多分一度もそれを付けることなく終わる。

だって、フラットリンクブレスが良すぎる!

Balticのメタルブレスはライスブレスとフラットリンクの2種類ある。そのどちらも現存する全てのモデルに装着可能。ラグ幅20mm。

質感はどちらも悪くない。もちろん大手ブランドの現行品ほどではないけれど。でも値段を考えたら頑張っていると思う。コストの掛かる仕上げ部分の荒さを「ヴィンテージ感」に転化しているあたりがとても上手い。
ようするにヴィンテージブレスを現代的にした感じなので、ある程度緩い。コマの遊びとか。
でもカッコいい。

左:ライスブレス表 右:フラットリンクブレス表

左:ライスブレス裏 右:フラットリンクブレス裏

上:ライスブレス側面 下:フラットリンクブレス側面

この二つのブレスレット、デザインが全然違うから当然だけど、つけ替えると時計全体の雰囲気が大きく変わる。

ライスブレスの方がフラットリンクよりもマッシブ。よって本体が大きい時計に似合う気がする。Aquascapheとか。一方フラットリンクは結構華奢。MR01やBicompaxと相性がいい。

テーパードもライスブレスが20-18に対してフラットリンクは20-16。写真を見ればバックルの大きさが一回り違うのが分かる。

で、今回のHermétique Glacier。自分はもう、このフラットリンクを付けるために買ったと言っても過言ではないくらい完璧なマッチングだと思っている。
本体の左右対称で縦に伸びやかなデザインにカチッと直線で構成されたフラットリンク。
薄い本体に薄いブレス。デザインの統一性もある。

もちろんこの辺りは好みの問題だけど、自分はフラットリンク一択だった。

まとめ

公式サイトやインスタのイメージを見る限り、Hermétique Tourerはフィールドウォッチとして宣伝されている。本気で秘境に踏み入るとかではなく、キャンプとか海辺とかちょっとしたアクティビティにぴったりの雰囲気。レギュラー設定の色も少しくすんだ感じ(現在のファッションの流行りにも合う)で、なんというか「アーシー」?

そのイメージに引きづられていたため、Glacier黒を買うことに決めたとき、すぐ頭に浮かんだのはエクスプローラー1だった。エクスプローラー1も36mm。ノンデイトで3・6・9の数字インデックス。

同じようなものを何本も買ってもなぁ、と悩んだ。

でも杞憂だった。

Glacierに関しては正直フィールドウォッチ感を微塵も感じない。

これを着けて「あなたも黒曜石を削って縄文人の生活を体験!」みたいな博物館の体験コーナーを楽しむ気にはなれない。キャンプにも海にもそぐわない(そもそもそういう屋外アクティビティに興味が無いという個人的事情もあるけど)。

Glacier黒、とくにフラットリンクを付けた黒はラグスポだと思う。

文字盤もキラキラ光るし、ベゼルも光るし、ブレスも光る。形状は8角形じゃないけどラグスポ。
薄くて快適な着け心地やちょっとゴージャスな意匠はヴィトンのタンブールに近い印象を受ける。

こんなズレた感想を長々書いているのは世界中でも自分くらいかもしれない。でも、そう感じたんだから仕方ない。

独りよがりにならないように妻に一応聞いてみた。現物を3本並べて、いかにこのGlacierがラグスポ寄りであるかを力説した。

妻はエクスプローラーとGlacierを交互に見ながら

「そう?」

と冷たい一言。そして

「エクスプローラーもきらきらしてるじゃん」

あー、まぁ確かに。

でもそれは、エヴェレスト登頂とか宣伝に使っている直球のフィールドウォッチのくせに、謎の超絶仕上げゆえ結果的にキラキラしてしまっているエクスプローラーが悪い!

誰がなんと言おうとGlacierはラグスポ(っぽい何か)!

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